消費者にわかりやすい表示を目指して 食品表示問題ネットワークの活動

見直しという名のもとに改悪続く食品表示
食品表示は、それまで農水省や厚労省に分かれていた所管が消費者庁に一元化され、2015年に「食品表示法」が施行されました。ただし食品表示法の食品表示基準は、それまでの食品衛生法やJAS法などの基準を横滑りさせたもので、順次見直すことになりました。

◆原料原産地表示
最初に検討されたのが、原料原産地表示です。2016年1~10月に「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が開催され、表示の対象は一部食品から全部に拡大されましたが、原料の表示は分量の多い上位1位だけになり、「輸入」という大括り表示が新たに導入されました。中間原料製造地を「国内製造」などと表示する表示法も作られました。つまり、国内で製粉すれば輸入小麦にも「国内製造」と表示ができる、国産と紛らわしい表示です。大括り表示と原料製造地表示には消費者からの反対が強かったのですが、結局導入され、本年2022年4月1日に全面施行されました。

◆遺伝子組換え表示
2017年度には「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開かれ、現行の表示免除5%をEU並みの1%にできないか、輸入大豆にたよる食用油や醤油などが免除されてほとんど表示されていないうえ、「不分別」の表示がわかりにくい、などの消費者からの改善要望は無視され、現行制度の継続が決まりました。さらに、「遺伝子組み換えでない」表示が槍玉に上げられ、表示の条件が今までの5%以下から不検出(0.01~0.1%)になり、分別生産流通管理されたNon-GMOの輸入原料を使用した醤油や食用油などはGMOの混入が避けられないため、「遺伝子組み換えでない」表示はできなくなります。2023年3月末まで経過措置期間を置き、同年4月1日に全面施行になりますが、すでに消費者の唯一の選択肢であった「遺伝子組み換えでない」表示が店頭から消えつつあります。

◆ゲノム編集表示
ゲノム編集表示に関しては、検討会を開くこともなく、2019年5月から6月にかけて行われた消費者委員会食品表示部会で「義務づけない」ことが決定されました。

◆食品添加物表示
2019年度には「食品添加物表示制度に関する検討会」が開催され、一括名で記載する「膨脹剤」「乳化剤」などや、類別名で記載する「増粘多糖類」「カロチノイド色素」などといった、消費者にわかりにくい現行の表示制度の継続が決まりました。食品添加物表示でも「無添加・不使用」表示が問題となり、改めて設置された「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」で議論され、今年3月にガイドラインが決定されました。消費者に誤認を与えないための具体的事項が10類型にまとめられています(次ページの表1参照)。ガイドラインの規定は、経過措置を経て、2024年4月1日に全面施行されます。
検討会では「実行可能性」の言葉で業界の意見ばかりが通り、消費者の声は無視されています。「消費者庁」は消費者の利益を守るための省庁なのですから、消費者の声こそ聞くべきです。

表1 食品添加物不使用表示ガイドラインの禁止事項

類型1単なる「無添加」の表示
類型2食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
類型3食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
類型4同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
類型5同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
類型6健康、安全と関連付ける表示
類型7健康、安全以外と関連付ける表示
類型8食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
類型9加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている食品への表示
類型10過度に強調された表示

 

問題の多い食品添加物不使用表示ガイドライン
食品添加物不使用表示ガイドラインには以下のような問題点があります。
①一般的に使われている「化学調味料」や「合成保存料」などの用語を禁止している。
②類似機能を持つ原材料、健康や安全またはそれ以外の事項など、禁止の範囲が非常に曖昧。
③既存の規定でも、不適切な表示は十分規制することができる。
④任意表示である無添加・不使用表示に対して過剰な規制をすることになる。
⑤食品添加物は安全という前提で議論され、消費者の不安や事業者の低減努力を無視している。
ガイドラインの規定には、このように理不尽な内容やかなり曖昧な内容が含まれています。このままでは処分を恐れる事業者が拡大解釈して表示を自粛し、無添加・不使用表示は店頭からなくなります。すでに規制を恐れて事業者に自粛の動きが広がりつつあります。
「食の安全・安心を創る議員連盟」(食の安全議連:会長篠原孝衆議院議員)が昨年開催した「食品表示について市民の声を聞く集会」を契機に発足した「食品表示問題ネットワーク」(略称:表示ネット、事務局:日本消費者連盟)では、この間、食の安全議連と連携して消費者庁と意見交換を続けてきました。3月1日の消費者庁の検討会でのガイドライン案了承を受け、3月15日には食の安全議連主催の「第3回 食品表示について食の安全議連に私たちの声を届けるオンライン集会」に参加して、消費者・事業者の声を届けました。食の安全議連の議員は、国会の委員会で質問を行い、消費者庁も「事実に基づく表示は規制しない」と回答するようになりました。
消費者庁の調査によれば、消費者の半数以上が無添加・不使用表示を商品選択の参考にしており、その7割が安全・安心を理由に挙げています。中には不適切な表示もありますが、本来の無添加・不使用表示は、消費者の不安に応えて食品添加物の不使用・削減を追求している製造者・流通事業者・生協などが、そのことを消費者に伝える手段です。そこで表示ネットでは、5月30日に改めて「食品表示を考える集い」を衆議院議員会館で開催し、消費者にわかりやすい表示、食品添加物を削減している事業者に対する表示の継続を訴えました。
表示ネットでは今後、その他の表示項目についても取り組んでいきます。当面焦点になると考えられるのが、ゲノム編集表示と原料原産地表示です。ゲノム編集表示は、遺伝子操作食品のリスクと規制について議論し直すことも必要です。リスクをないものとし、トレーサビリティが確保できない等の理由で表示が免除されるのは消費者の選択する権利の侵害です。原料原産地表示の「国内製造」などの紛らわしい表示は明らかに消費者の誤認を招いています。表示ネットは今後も食の安全議連と連携して運動を進めていきます。(原英二)

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンニュース214号より転載

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